○倉吉市議会基本条例
令和5年7月3日条例第26号
倉吉市議会基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条)
第2章 議会、議員等の活動原則(第2条―第7条)
第3章 市民と議会の関係(第8条―第10条)
第4章 議会と市長等との関係(第11条―第14条)
第5章 議会の機能強化(第15条―第22条)
第6章 議会事務局(第23条・第24条)
第7章 議員定数及び議員報酬(第25条・第26条)
第8章 議員の政治倫理(第27条・第28条)
第9章 災害時等の議会運営(第29条)
第10章 条例の位置付け(第30条)
第11章 見直し手続(第31条)
第12章 補則(第32条)
附則
倉吉市政は、倉吉市民から直接選挙で選ばれた議員で構成される市議会と、同じく市民から直接選挙で選ばれた市長との二元代表制の下で運営され、議会は合議制の議事機関として、市長は独任制の執行機関として、それぞれ独立の立場で互いに尊重し、抑制と均衡を保ちながら、それぞれの特性を生かし、適切に役割を果たすことが求められている。
また、昨今の地方分権社会において、議会の果たすべき役割と責任は一層重要となってきている。
しかしながら、令和3年10月に行われた倉吉市議会議員一般選挙では、投票率が過去最低の結果となった。このことは、市民の議会に対する関心の低下を意味しており、議会は自らの問題点を洗い出し、それらを改善することにより、市民に信頼され、存在感のある豊かな議会を築かなければならない。
そのために議会は、民主主義の前提である情報の公開、積極的な市民との対話、政策への多様な市民参加の促進、議員間の自由かっ達な討議の展開、意思決定過程の明確化、議員の研さんと資質の向上、議会活動を支える体制整備等について本条例に定め、不断の努力や自己改革を実践することにより、自らの機能を強化し、議会改革を行うことが求められている。
よってここに倉吉市議会は、議事機関としての機能を最大限発揮するとともに、市民に身近で信頼される開かれた議会を目指し、市民の負託に全力で応える決意をもってこの条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、二元代表制の下、議事機関である倉吉市議会(以下「議会」という。)の基本的事項を定め、地方自治の本旨に基づき、市民の負託及び信頼に的確に応えるような責任のある活動を推進し、もって市民福祉の向上及び公正で民主的な市政の発展並びに市勢の伸展に寄与することを目的とする。
第2章 議会、議員等の活動原則
(議会の活動原則)
第2条 議会は、次に掲げる原則に基づいて活動しなければならない。
(1) 市民に開かれた議会運営に努め、分かりやすい言葉、表現を用いて説明責任を果たすこと。
(2) 市民の参加を保障し、多様な意見及び要望を的確に把握すること。
(3) 地方自治の調査研究を通じて、適切な市政運営が行われているか監視及び評価すること。
(4) 市長その他執行機関の職員(以下「市長等」という。)に対し、政策の立案及び提言その他能動的な活動(以下「政策立案等」という。)を行うこと。
(5) 常に公平性、公正性及び透明性を確保すること。
(委員会の活動原則)
第3条 委員会(地方自治法(昭和22年法律第67号)第109条第1項に規定する常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会をいう。以下同じ。)は、その所管に属する議案、請願等の審査を充実させ、その機能を十分に発揮しなければならない。
2 常任委員会及び議会運営委員会は、市政の課題に適切かつ迅速に対応するため、所管事務調査及び長期の調査研究が必要とされる特定所管事務調査の積極的な活用により、政策立案等を行わなければならない。
(議員の活動原則)
第4条 議員は、次に掲げる原則に基づいて活動しなければならない。
(1) 市民全体の奉仕者として、一部の団体又は地域の代表にとどまらず、市民の多様な意見の把握に努め、市民全体の福祉の向上を目指すこと。
(2) 言論の府として議員間の自由でかっ達な討議を通じて論点及び争点を明らかにし、合意形成を目指して審議を尽くすこと。
(3) 自己の資質向上に努め、常に研さんすること。
(4) 市民の代表として相応しい品位を保ち、誠実かつ公正に職務を遂行すること。
(議長の活動原則)
第5条 議長は、議会を代表し、議会の秩序を維持し、議事を整理し、及び議会事務を統理するとともに、公平公正な議会運営を行わなければならない。
(議会改革の推進)
第6条 議会は、社会情勢の変化及び新たに生じる市政の課題に対し、その役割及び責務を適切に果たすため、継続的に議会改革を推進しなければならない。
2 前項の推進を行うために議員は、常に議会運営に客観的視点及び問題意識を持ちながら、不断の取組をしなければならない。
(懲罰乱用の禁止)
第7条 議会の秩序を維持し、会議を円滑に進行させることは議会の構成員たる議員の責務であることから、みだりに懲罰の動議等を提出し、市民のための議論を停滞させることは、厳に慎まなければならない。
2 議会が議員に懲罰を科そうとする場合には、議員が市民の負託を受けて選ばれていること及びその決定により議員本来の活動を制約させるおそれがあることを踏まえ、慎重に判断しなければならない。
第3章 市民と議会の関係
(市民への情報公開)
第8条 議会は、傍聴の自由及び報道の自由を保障するため、議会に関する全ての会議を原則公開とし、会議録その他議会活動に関する資料を公開するものとする。
(市民参画の推進)
第9条 議会は、市民、市民団体等と意見交換の場を設け、多様な意見を聴取する取組を強化するとともに、政策提言の機会の拡大を図るものとする。
2 議会は、請願及び陳情並びに要望を政策及び施策の提案に位置付け、その審議及び調査に当たって当該請願及び陳情並びに要望の提出者が希望する場合は、その意見を聴く機会を設けるものとする。
(広報及び広聴の充実)
第10条 議会は、多くの市民が議会及び市政への関心を高めるため、議会活動に関して多種多様な媒体を用いて市民にわかりやすい情報提供を行わなければならない。
2 議会は、広報活動及び広聴活動の充実強化のための体制整備に努めなければならない。
第4章 議会と市長等との関係
(市長等との関係)
第11条 本会議及び委員会における質疑及び質問については、総括方式によるほか、論点及び争点を明確にするため、一問一答方式によることができる。
2 本会議又は委員会に出席を要請された市長等は、議員の質疑及び質問に対して、議長又は委員長の許可を得て反問することができる。
3 本会議に出席を要請された市長等は、議員提出議案及び議員修正案に対して、議長の許可を得て意見を述べることができる。
(市長等による政策等形成過程の説明)
第12条 議会は、市長等が提案する政策、計画、施策、事務事業等(以下「政策等」という。)について、議会審議における論点を明確にし、政策等の水準の向上及び市民への公開のため、市長等に対し、次に掲げる事項の説明及び資料の提出を求めることができる。
(1) 政策等を行う理由又は目的
(2) 政策等を行うに至った経緯
(3) 政策等の効果予測
(4) 政策等の実施に関わる経費の財源措置
(5) 将来にわたる政策等の継続に要する経費
(6) 比較検討した他の案及びその内容
(7) 他の地方公共団体の類似する政策等との比較検討の結果
(8) 市の総合計画における根拠及び位置付け並びに当該計画との整合性
(9) 市民参画の実施の有無及びその内容
(10) 関係する法令、条例等
2 議会は、市長が予算案及び決算を議会に提出し、議会の審議に付すに当たっては、前項の規定に準じ、分かりやすい施策別又は事業別の政策等説明資料を作成し、提示するよう求めることができる。
3 市長等は、議会から政策等に関する資料の提出及び説明の要求があったときは、誠実に対応するものとする。
(議会の政策立案等)
第13条 議会は、条例の制定又は改廃、議案の修正、決議等を通じて、市長等に対し、積極的に政策立案等を行わなければならない。
2 議会は、前項の政策立案等を行うに当たっては、前条第1項各号に掲げる事項の説明を行うよう努めなければならない。
(議決後の対応)
第14条 議会は、本会議において議決した事項について、市長等に対し、その後の状況、対応等の報告を求めることができる。
2 議会は、議決責任を深く認識し、自治体としての意思決定又は政策決定をしたときは、市民の求めに応じて、誠実に説明責任を果たさなければならない。
第5章 議会の機能強化
(議員間の自由討議)
第15条 議会は、議会の運営及び議案等の審議又は審査に当たっては、議員相互の自由な議論を尽くす場を設け、合意形成に努めなければならない。
2 議員は、前項の議論において、政策立案等を積極的に行うよう努めなければならない。
(議案等の審査及び調査)
第16条 議会は、議案等の審査及び調査に当たり、学識経験を有する者等による専門的事項に係る調査を積極的に活用するよう努めなければならない。
2 議会は、公聴会制度及び参考人制度を積極的に活用し、利害関係を有する者又は学識経験を有する者等の意見を議会の審議に反映させるように努めなければならない。
(議会の議決事件)
第17条 議会は、市政に関する重要な計画、事業に関する基本的な計画等について、地方自治法第96条第2項の規定による議会の議決すべき事件として別に条例で定め、二元代表制の意義を最大限に発揮するよう努めなければならない。
(研修の充実)
第18条 議会は、議員の政策形成及び立案能力の向上を図るため、議員研修の充実及び強化に努めなければならない。
2 議会は、前項の研修を実施するに当たって、専門的知識を有する者、有識者等を積極的に活用するよう努めなければならない。
(交流及び連携の推進)
第19条 議会は、共通する行政課題及び議会運営について調査、研究等を行うため、他の地方公共団体の議会との交流及び連携を推進するよう努めなければならない。
(情報通信技術の活用)
第20条 議会は、議会活動を円滑かつ効率的に行うため、積極的に情報通信技術を活用しなければならない。
2 議会は、災害の発生、感染症のまん延その他のやむを得ない理由により議員の参集が困難な場合は、その状況に応じて情報通信技術を積極的に活用し、議会活動の継続を図らなければならない。
(予算の確保)
第21条 議会は、議事機関としての機能を確保するとともに、より円滑な議会運営を実現するため、必要な予算の確保に努めなければならない。
(議会図書室)
第22条 議会は、議員の調査研究の推進及び政策立案等に係る能力の向上等を図るため、議会図書室を充実させ、活用するように努めなければならない。
2 議会は、議会図書室の機能を充実させるため、倉吉市立図書館等との連携に努めなければならない。
第6章 議会事務局
(議会事務局の体制整備)
第23条 議長の統理する事務を遂行するため、地方自治法第138条第2項の規定に基づき議会事務局を設置する。
2 議会は、議員の政策立案等を補佐するため、議会事務局の調査機能及び法務機能の充実強化を図るよう努めなければならない。
3 議会は、議会事務局の専門性を高めるため、必要に応じて知識、経験等を有する者を議会事務局に置くことができる。
(広報活動の充実)
第24条 議会事務局は、多くの市民が議会及び市政への関心を高めるため、多様な広報手段を活用し、議会広報活動の充実強化に努めなければならない。
第7章 議員定数及び議員報酬
(議員定数)
2 議員定数の変更に当たっては、公聴会制度及び参考人制度を十分に活用することにより、市政の現状及び課題並びに将来の予測、展望等を十分に考慮し、本市の実情にあった定数を検討する。
(議員報酬)
第26条 議員報酬の額は、社会経済情勢を勘案するとともに、議員の活動状況を反映して定めなければならない。
2 前項の規定に基づく議員報酬の額については、特別職の職員の給与等に関する条例(昭和28年倉吉市条例第29号)で定める。
3 議員報酬の額の改定に当たっては、倉吉市特別職報酬等審議会条例(昭和39年倉吉市条例第43号)に規定する倉吉市特別職報酬等審議会の答申等を考慮するものとする。
4 議員は、議員報酬が自らの職務遂行に対して支給されるものであることを自覚しなければならない。
第8章 議員の政治倫理
(議員の政治倫理)
第27条 議員は、市民全体の奉仕者として、高い倫理観が求められていることを自覚し、誠実、清廉を基本としなければならない。
2 議員は、自らの言動の重みを深く認識し、その地位や権限を私的利益のために利用することなく、市民から疑念を抱かれないよう自ら研さんを積み、常日頃から公平公正に行動しなければならない。
3 議員の政治倫理に関する規律の基本となる事項は、倉吉市議会議員政治倫理条例(平成25年倉吉市条例第20号)で定める。
(政務活動費)
第28条 政務活動費は、議員による政策立案等に係る能力の向上等を図るため、倉吉市議会政務活動費の交付に関する条例(平成24年倉吉市条例第2号)に基づき、議員個人に対して交付するものとする。
2 議員は、政務活動費を有効に活用しなければならない。
3 議長は、政務活動費の使途について市民から疑義を持たれないよう、市民への説明責任を果たさなければならない。
第9章 災害時等の議会運営
(災害時等の議会対応)
第29条 議会は、災害時その他の非常時(以下「災害時等」という。)においても、迅速かつ的確に議会機能を維持しなければならない。
2 災害時等での議会の行動基準等については、倉吉市議会業務継続計画(議会が災害時等においても議会としての権能を果たすために必要な事項を定めた計画をいう。)で定める。
第10章 条例の位置付け
(最高規範性)
第30条 この条例は、議会の最高規範としての条例であり、議会に関する他の条例、規則等を解釈し、又は制定し、若しくは改廃する場合においては、この条例との整合を図り、体系的に整備するものとする。
第11章 見直し手続
(条例の検証及び見直し)
第31条 議会は、この条例の目的が達成されているかを定期又は適時に検証しなければならない。
2 前項の規定による検証の結果、必要と認める場合は、この条例の改正その他の適切な措置を速やかに講じなければならない。
3 議会は、第1項の規定による検証及び前項の措置を講じたときは、それらを市民に公表しなければならない。
第12章 補則
(委任)
第32条 この条例の施行に関し必要な事項は、議会が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。