教育長エッセイ「がんばろう 倉吉 ~鳥取中部地震を乗り越えて~」
がんばろう 倉吉 ~鳥取中部地震を乗り越えて~
10.21鳥取中部地震震から1ヶ月になります。
相変わらずのブルーシートを被った家並が続いています。防災対策本部のまとめによりますと、家屋被害が9000件を超えています。倉吉市は約18000世帯ですので、半数が被害を受けていることになります。一時2000人を超えていた避難者は15名になりました。自重していた様々なイベントも行われるようになりました。少しずつ復旧・復興への道のりを歩み始めています。
倉吉の子どもたちは、元気です。
地震のために延期になった学習発表会、体育館が避難所となり避難している人たちと一緒にした学校、体育館が使えなくて他の学校で文化祭を開催した学校、それぞれに今の状況の中で工夫をし、学習発表会・文化祭をしっかりと演じ、成長の糧としました。
今、ここにいることが 当たり前と思ってた
こんなにたくさんの力に 守られていたなんて
海も大地も 空も光も みんな一緒に生きている
今までも これからも ずっと
大好きな君だから この優しさ伝えたい
心から 「ありがとう」 ~全校合唱「いつまでも伝えたい」の歌詞より~
地域の方々から「子どもたちの真剣な中でも楽しんでいる姿に、元気と勇気とをもらいました。」とうれしい感想をいただいたという小学校もありました。また、人権劇を演じた代表者が「地震にあったことを劇が不出来な理由にしたくないという気持ちで短い時間でしたが、一人ひとりの力を合わせてやりました。地震にあったことは不幸ではなく、チャンスと捉え、これからもがんばりたい」とあいさつした中学校もありました。
二学期は、学習の充実をめざして、どの学校でも授業研究会に取り組んでいます。
英語科の授業研究をした学校では、他の中学校や小学校、高校の先生方も参加して、「互いに自分の考えを話して伝え合える生徒の育成を目指した指導法の工夫」をテーマに研究を深めました。どの学級でも意欲的に学ぶ姿があり、生徒の成長を感じました。
また、数学を楽しむ合宿に取り組む学校もありました。最初のテーマは「空間図形」。倉吉西高とコラボして、この教材を開発された小梁修先生を講師にお迎えしました。保護者の皆様が作ってくださった夕食を食べて、夜遅くまで楽しい数学の講座に挑戦しました。
11月19日の土曜授業の日、進路学習「先輩に学ぶ」に取り組んだ学校もあります。現在高校2年生の卒業生を招き、「高校での学習や生活の様子」「将来の夢」「中学生の時に努力しておくべきこと」等について話していただきました。高校生活まっただ中の身近な先輩から聞く話は、具体的でわかりやすいものでした。後輩のために時間を割いてくれた8名の卒業生の皆さんに感謝です。
子ども達の給食を賄う学校給食センター。建物の外構はあまり被害がなかったのですが、調理場・洗浄室の天井・側壁の落下、そして調理機器の状況など、給食を提供できる状況ではありません。先日、調査に来られた文部科学省職員の指導も受けながら、4月の学校給食センター再開をめざして復旧に取り組みます。
地震後の学校再開にあたり、簡易給食を提供しましたが、余震も少なくなり少し落ち着いてきましたので、11月1日から弁当持参といたしました。
その間、NPOあゆみの皆さんが、倉吉市の18校全てに「ハンバーグカレー・サラダ」を提供してくださいました。食器のふたには、倉吉市のキャラクター「くらすけくん」のイラストとともに「あなたたちは、日本の宝だ!」の文字が書かれていました。あたたかい食事と温かい心をいただきました。イオングループや新宿千疋屋さんからも子どもたちにとゼリーを提供していただきました。
避難所となった学校に寝泊りしていた先生は、温かい炊き出しの食事を食べて、「心が元気を取り戻していくような実感があった。口と心はつながっている。心のこもったあったかい食事と、気の置けないおしゃべりが元気をくれると思った」と述べていらっしゃいました。
週1回だけでも何とか温かいものを食べさせたいと思い、現在、周辺の三朝・湯梨浜・北栄・琴浦町の4町の学校給食センターから副食(汁物)を配送していただき、簡易給食を提供しています。1日3~5校ずつ配送し、ローテーションを組んでいます。今後も、弁当や簡易給食等を組み合わせるなど弁当の回数を少なくするよう工夫をしていきます。
この地震被害に対して、毎年交流している千葉県松戸市の小学生から激励のメッセセージと駅前で募金活動をした義援金をいただきました。熊本県嘉島中学校から東中へ、箕蚊屋中学校生徒会から西中へ、中ノ郷中学校生徒会から河北中へ激励や応援のメッセージが届いています。また、倉吉市名誉市民である磯野長蔵氏の御子孫磯野計一氏、明治屋さんから、そして、倉吉市出身の多くの方からも義援金を頂戴しております。全国から約3000名のボランティアが駆けつけ、復旧作業をしてくださいました。文化財関係でも、各県からのヘリテージマネージャー(歴史文化遺産活用推進員)が伝建群の家屋調査をしてくださいました。
国の補助率を上げて学校の耐震化を勧めてくださった文科省の職員からも、「国として耐震化を促進化して、結果として子どもたちを守れたのであれば、私としてもこの上なく嬉しい限りです。」とメールをくださいました。このように、実に多くの人から力をいただいています。本当に感謝申し上げます。
まだまだ余震が続いています。あるお母さんから、非常用持ち出し袋とともに、「子どもが、夜寝るときに、枕元に明日着ていく服をたたんでおいておくようになった」というお話を聞きました。まさに自立の第一歩です。「地震をチャンスと捉え、がんばりたい」と述べた中学生もいます。
地震を経験することで、さらに成長していく子どもたちの姿にたくましさを感じます。
平成28年11月21日
倉吉市教育委員会教育長 福井伸一郎