館長コラム (11)(2017.1)

 新年明けましておめでとうございます。
 雪深い山陰にとっては、いつになく温かく穏やかな年開けを迎えることができました。
 各家の玄関先には、この地方で「めがね」と呼ぶ正月飾りが掲げられています。いつもと変わらぬ正月の風景ですが、唯一つ違うのは、多くの家々の屋根がブルーシートで覆われているこ とです。

 昨年10月21日に発生した震度6弱(M6.6)の鳥取県中部地震では、幸いにも人的な被害はあ りませんでしたが、一部で家屋の倒壊があり、多くの民家で大小の差はあれ損壊等が見られま した。また、倉吉市役所本庁舎(昭和31年 丹下建三設計)は、ガラスが破損し躯体が歪むなど大きな被害を受け一時業務を停止せざるを得ない状況でした。一方、当館は、昨年(2016年)3月末に耐震補強工事を終えたばかりだったので建物の躯体に影響する被害はありませんでした。

 しかし、給水施設や空調設備の配管損傷があり、復旧するまでの間、約2週間にわたって給水が止まりました。また、考古常設展示室の袖壁(自立壁)に深い亀裂が入り、倒壊の恐れがある状態になったことや土器類が転倒して破損するなどの被害がありました。こうしたなかで、美術 展示室や併設する民俗資料館展示室、そして、美術資料や民俗資料には目立った被害はありませんでした。

 地震直後から42日間休館を余儀なくされましたが、12月3日に一部再開することができました。 久しぶりに館内に賑やかさが戻り、再開の報道を聞きつけて来館し激励をいただいた方もありました。また、元旦に届いた年賀状にも多くの方から震災のお見舞いをいただきました。本当にご心配をお掛けしました。ありがとうございました。

 さて、今年は震災からの復旧と復興を目指し歩んで行くことになります。3月までは、28年度予 定の展示を前倒しして行います。3月中・下旬には再び全面休館をさせていただき復旧工事に着 手する予定です。今のところ8月に再オープンする計画で進めています。

 当館をご利用いただいている皆様には多大なご迷惑をお掛けしますが何卒、ご理解を賜ります ようお願い申し上げます。


 今年の干支は酉(とり)。当館の年初め第1弾の普及イベントは恒例の水鳥ウォッチングです。近くの河川敷きを歩き、水鳥を観察します。オレンジ色の身体に瑠璃色の羽根が鮮やかなカワ セミやゆったりと水面を遊ぶマガモなど例年と変わらない光景が広がっています。干支にちなみ、 羽ばたくことのできる1年にしたいと思います。

 穏やかな天候に恵まれた今年、確実に一歩ずつ、より早い復旧と実のある復興を目指して進んでいきたいと思います。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

館長 根鈴輝雄