「平山郁夫が描く世界遺産展」一時休館のお詫びと山野散策の勧め
倉吉博物館が建つ打吹公園の桜木も、すでに若葉に変わり、季節は、淡い春の匂いから深い緑の香りへと移ろっています。デスクから眺める外の景色は、いつもどおりのこの時期の風景。なのに、身の周りに起こっているのは、世界に蔓延する新型コロナウイルスの恐怖。鳥取県内の感染者は少ないものの、人の往来なしには現代の生活は成り立たなくなっており、人から人への感染の拡散が心配です。その心境は、古今和歌集の歌を借りて 「コロナ来る 目にはさやかに 見えねども その威力 脅威なりぬる」 の思いです。
さて、今月4日から開催してきました当館春の特別展「平山郁夫が描く世界遺産展」は、24日から5月6日まで新型コロナウイルスの感染拡散防止のための臨時休館により、中断することとなりました。展覧会を楽しみにしておられた多くの皆さまには、会期の大幅な短縮で大変ご迷惑をお掛けすることとなり申し訳なく思います。何卒、ご理解をいただきますようお願い申し上げます。
「平山郁夫が描く世界遺産展」は、5月7日からの再開を現時点では考えていますが、新型コロナウイルスの感染状況によっては休館を延長することも考えられます。その際は、共催者である新日本海新聞社の紙面や当館のHPなどでお知らせいたします。どうかご理解いただきますよう重ねてお願いいたします。
冒頭に紹介した打吹公園は、新緑が目にやさしい若葉の盛りです。博物館前の椿の平(なる)のヤブツバキもほぼ終わり、変わって深紅のキリシマツツジが目に鮮やかです。葉表の艶が瑞々しいツワブキもしだいに緑を増し、初夏への移ろいを告げています。
倉吉博物館は、打吹公園内に建つ総合博物館として、打吹山の生態にも目を向け、約10年前から月1回の発行で、A4サイズペーパー1枚を使って打吹山の自然をガイダンスしてきました。昨年、通算100号を超えたので、これまでのガイドを一冊にまとめ今年3月に『打吹山ウォッチングガイド』として刊行しました。平成23年からほぼ毎日、打吹山を観察し続けてこられた当館専門委員(自然分野)の國本洸紀氏が自身の目で観て、カメラに収め、書き下ろした渾身の観察記録です。約10年分、111枚のA4ペーパーを春夏秋冬に編集し直し、字句の表記も整えて一書としたガイドブックです。
今、手に取って4月の項目を開くと、「ツツジの花から」(P6)、「ツマキチョウ」「シャガの葉」(P7)、「トキワイカリソウ」(P8)など、打吹山で目にすることのできる草やチョウの生態について興味深く解説してあります。
新型コロナウイルスの感染防止で人との接触を避けなくてはならないこの時に、このガイドブックを小脇に打吹山で時を過ごしてみてはいかがでしょうか。いつもとは違った生活に少しでも潤いを得られることになれば、コロナ終息後の次への活力も湧いてくるのではないでしょうか。もう少し、辛抱強く待ちましょう。我慢の時です。
館長 根鈴輝雄
『打吹山ウォッチングガイド』は1冊1,500円(税込) 倉吉博物館にて販売しています。