9月に入り少し凌ぎ易くなったものの、日中の最高気温は30度を越えます。それでも秋に移ろうとしてか、天候はやや不安定で時おり雨が襲う日が続きます。
こうしたなか8日には、第8回目を迎える菅楯彦大賞展を無事開幕することが できました。菅楯彦さんは明治生まれで昭和38年に85歳でお亡くなりになった日本画家です。鳥取に生まれ、大阪を舞台に浪速の風俗を柔らかな筆使いで表現した人です。昭和20年には父祖ゆかりの倉吉に疎開、旧家の茶亭をアトリエ に倉吉の文化人とも交流をはかりました。その画業は、日本画部門で初めてと なる日本芸術院恩賜賞受賞となって実り、さらに、大阪市名誉市民第一号、そして倉吉との縁で本市の名誉市民でもあります。菅楯彦さんが追い求めた「風俗画」が、この菅楯彦大賞展のテーマです。現代の作家がどのようにこの テーマに立ち向かい、表現するのか。指名応募制によるコンクールです。
開幕日には出品された32点の中から選考された大賞1点と佳作賞4点、 協賛をいただいている百花堂賞1点の表彰式を行いました。表彰式には東京や金沢から倉吉に駆けつけていただき、受賞者5名全員がそろいました。表彰式後には、2名の審査委員(瀧悌三先生と中野嘉之先生)の先生にも加わっていただき ギャラリートークを行いました。また、表彰式に参加いただいた4名の出品者の方にもトークをお願いし、それぞれ自作を語っていただきました。 (ホームページにアップしています)
夕方からは、会場をホテルにうつし懇親会です。審査委員の先生も受賞者や出品者の方も、そして博物館スタッフも、みんな役割を終えて肩の荷を降ろし大盛り上がりの宴を満喫しました。(アップしていません)4年に一度の菅 楯彦大賞展。奇しくもオリンピックと同じ開催年となります。懇親会場のあちら こちらで、4年後の再開を誓いあう姿がありました。
さて、来月はいよいよ、私が担当を務める「大江磐代君顕彰展」の開幕です。
大江磐代君は、江戸時代の延享元年に倉吉に生まれ、京都にのぼり閑院宮に奉公して側室となり、天皇の母となった女性です。ここ2ヶ月あまり、大江磐代君の書状とにらめっこの毎日が続いています。流麗というか難解というかなかなか読み下りません。幸い先行研究があるのでにらめっこしているのは書き下し文です。 書状は、宛名がなかったり、登場する人間関係がよく分からなかったりと、まるで解けない推理小説を読んでいるようです。書状に書かれた内容から大江磐代君の人となりに迫ろうと短文を書き始めました。人物相関図も作ってみます。 開幕まであと1ヶ月となり、まだ推理の中にあり迷路から抜け出せません。しかしキーワードは見つけました。このキー(カギ)で何とか扉を押し開き迷路から脱し開幕へ向かいたいと思います。
館長 根鈴輝雄