「慶州、ソウルへのたび ~倉吉文化のルーツを訪ねて~」
久しぶりに韓国へ行ってきました。最近訪れたのが平成19年ですから、なんと6年ぶりです。10月25日(金曜日)から4泊5日の旅でした。今回の旅の目的は、韓国 千年の古都慶州への再訪です。仏国寺や石窟庵、皇龍寺に芬皇寺、雁鴨池そして国立慶州博物館など慶州の史蹟探訪には欠かせない、しかも私にとって懐かしい地へ訪れることができました。
「懐かしい」と言ったのは、平成12年の秋に私自身が約2ヶ月滞在した地だか らです。この間、国立慶州博物館で主に雁鴨池の出土品を中心に調査をさせてい ただきました。もちろん、研究室に閉じこもってばかりいたのではなく、土日に は仏教遺跡の宝庫、南山(ナムサン)はじめ近隣の遺跡にも足をのばしてフィー ルドワークも行いました。
久しぶりの国立慶州博物館は、新しい美術史館がオープンしており、倉吉博物 館で12年前に開催した特別展で借用した金銅仏にも対面できました。美術史館で仏教美術品をじっくり拝見した後、本館に向かって歩いているとそこにまた懐か しい顔がありました。国立中央博物館の閔丙贊(ミン・ビョンチャン)さんです。彼は、私が慶州に滞在していた時、仕事のことや日常の生活のことなど大変お世 話になった方です。この日は、博物館での講演会に講師として招かれて慶州に来たらしく、講演終了後はすぐにソウルに戻り、明朝からはニューヨークに出張するとのこと。まったく偶然の出会いに声も出ないほど驚きました。いつか、ソウ ルもしくは日本で再会できることをお互いに願いました。
韓国3日目は、ソウルです。時間の制約のなか、国立中央博物館を見学しまし た。中央博物館は、広大な敷地を求めて景福宮内から8年前に二村(イチョン)に全面移転しました。2回目でしたのでどこに何が展示してあるかほぼ分かって いましたが、それでもじっくり見て回る時間はなく、先史・原始のコーナーと仏 教美術のフロアーを中心に見学しました。展示内容は、1日掛けても全容は分から
ないくらいのボリュームです。最終4日目は、近年観光スポットとして注目を集め ている、朝鮮時代の暮らしが残る北村(ブクチョン)です。景福宮の東北に位置し、起伏の激しい地形に沿って宮中に出入りする人々の屋敷が建ち並んでいます。屋 敷内を改造して美術館やカフェに衣替えし内部を一般に公開しています。韓服を着たり、飾り結びを体験できるところもあり、韓国内ばかりでなく日本や欧米の人の見学もたくさん見られました。この北村は、今回初めて訪れる場所でした。 喧騒のソウル中心部にあって、まるで時間が止まったかのようにゆったりと朝鮮 時代の生活文化に接することができました。
韓国に行くと、いつも思うのは日本にとってのお兄さんの国ということです。 倉吉博物館に展示してある出土品のなかには装飾須恵器や全身像鬼瓦など朝鮮半 島ルーツのものがいくつかあります。今回のたびも、倉吉文化のルーツの一端に触れることができました。
館長 根鈴輝雄