平成26年度がいよいよ始まりました。倉吉博物館も職員の異動があり、新体制でスタートすることとなりました。ベテラン職員やフレッシュな新人など、それぞれが役割を自覚し、新たな気持ちで仕事に臨んでいきたいと思います。
倉吉博物館前には椿の平(なる)と呼ばれる藪椿の群生があります。枝振りが10mにも及ぶ大木もあり、花の姿もよく見ると色合いの濃淡や花びらの開きかたなどが少しずつ違っています。3月中頃から咲き始めた花は盛りをすぎ、木の周りは赤いじゅうたんを敷いたように染まっています。椿を見ると小さい頃に吸った藪椿の甘い蜜を思い出します。
倉吉博物館は、山陰の桜の名所、打吹公園の一角にあります。ソメイヨシノを中心に古木や若木が今まさに満開です。昨年、植樹した80本のソメイヨシノも花をつけています。市制60周年を記念して市民の方から寄贈いただいたもので、寄贈された方のプレートを見ながら花を眺めるのも楽しみです。
咲き誇った桜はもちろんキレイです。感動します。でも満開になるまでの桜にも私はエネルギーを感じます。桜の散りぎわがキレイなのは、寒い冬に蓄えたエネルギーを一気に放って咲き誇り、そして散っていく、その儚さに潔さを感じるからです。桜の見ごろも今週末から来週はじめ頃まででしょうか。ほんとうに儚いです。
春は新生の時期でもありますが、別れのときでもあります。3月末には、退職される諸先輩を見送りました。先輩たちのそれぞれの人生に自らの道の歩き方を教えられました。3月31日から4月1日。元旦を迎える一秒一秒の期待とはまた違った一年365日のなかの特別な一日。リセットされることで、次の活力も生まれるのではないでしょうか。
さて、1月のコラムでもお伝えしたとおり、今年は、倉吉博物館が開館して40年の節目です。4つの特別展に加え、恒例の美術展や自然科学展など盛りだくさんに企画を打ち出していきます。
今年度最初の特別展として4月12日には、「与勇輝展ー昭和の情景―」を開幕します。与勇輝さんは、国内外で人気の高い人形作家です。国内各地はもとよりニューヨーク、パリ、サンパウロでも個展を開き好評を博してきました。人形の表情はもちろん、小物のひとつひとつまで丁寧に作り込んだ造形からは、温かみと懐かしさが伝わってきます。懐かしさのなかに温もりを感じる倉吉白壁土蔵群の屋並み。古い町並みを守り残し、文化観光資源としても発信を続ける倉吉のイメージにも相応しい展覧会として企画しました。多くの方にご鑑賞いただきたいと思います。
芸術文化あふれる質の高い美術展の開催や創作活動の発表の場として、さらには重層な歴史文化の学びの場としてこれからも事業展開してまいります。今年度もどうぞよろしくお願いします。
館長 根鈴輝雄