更新日:2017年10月23日
あのとき、これから ~鳥取県中部地震から1年~
秋の青空、緑の打吹山の麓、9月29日には小学生850名の参加による中部小学校陸上大会、10月8日にはくらよし女子駅伝・日本海駅伝大会が復旧工事を終え新しくなった陸上競技場で開催されました。また、10月6日は武道館が使用可能となりました。スポーツ施設も次々と修理工事が終わり、復旧してきています。学校施設も地震による災害復旧工事がほぼ修了し、これからトイレの洋式化工事へと移ります。
平成28年10月21日(金曜日)午後2時7分 震度6弱の地震発生!
あれから1年が経過します。市街地に多くあったブルーシートもずいぶんと減ってきましたが、まだところどころに残されたままです。
あのとき、どうだったのか
14時07分 地震 6弱 全員庁外へ避難 (東庁舎前から本庁舎南側駐車場へ移動)
14時30分 避難所設置 調査(建+教育) (各地の避難所開設が可能かどうかの調査派遣)
14時40分 成徳小仮校舎 災対設置 (災害対策本部を成徳小仮校舎に設置)
15時03分 災対本部 中部総合へ (災害対策本部を中部総合事務所へ移動)
16時00分 中部総合事務所202室 市長指示 市役所使用不可 ここを使う。
指揮命令系統の整備、連絡係2名。避難所開設の準備 → 各小中学校
16時30分 学校へ指示
・児童生徒は学校で預かり、保護者が来たら渡す。完了後報告。
・学校職員は、校長・教頭・教諭2名で避難所対応
・学校の片づけは必要最小限度 余震が継続中なので十分に注意すること
18時58分 全児童・生徒の保護者へ引き渡す。
殴り書きのメモは7枚。10月22日、18時までの初期対応のメモです。次々と判断を求められる状況で、メモを取る余裕もなく対応した時間でした。( )は後で記述したものです。
明倫小学校では、3時からの音楽会の準備に取りかかろうとしていた時、震度6弱の地震に見舞われました。恐ろしさを感じる地鳴りと激しい揺れの中、子どもたちをしっかり守らなくてはと必死でした。地震による停電のため放送は使えず、自分の声だけが頼りです。大声で伝達しながら、揺れが少し収まった間に全員校庭に避難しました。その後、子どもたちの引き渡しが始まりました。最後の児童を保護者に引き渡したのは、午後5時半でした。ほっとしたのもつかの間、体育館が避難所となり、その対応に追われました。南校舎屋上に設置してある給水タンクが損壊したため、すべてが断水。公民館長さん、民生委員さん、県・市の職員さんと協力しながら避難所を準備しました。 (明倫小学校 生田文子校長記)
また、成徳公民館では、2階中会議室で公民館主催の趣味の講座「つまみ細工」を開催中の時でした。地域の人20余名が参加していました。激しい揺れに、ドアは倒れ、ガラスは割れ、屋根の瓦は雪崩のごとく落下していました。想像を絶する凄まじさでした。参加者は恐怖におののきながらも机の下に身を屈めました。まずは身の安全が第一。状況判断をしながら大声で指示をしました。地震が少し治まった頃を見計らって、つぎの行動を起こしましたが、幸いにも誰一人怪我もなく避難できて一安心しました。(成徳地区公民館小谷次雄館長記)
約9,500棟にのぼる住家被害、約2,000人の避難者への対応など、どの場所でも、どの職場・家庭でも、同じように混乱の中で、精一杯に対応してやってこられたことと思います。
これから、どうするのか
鳥取県中部地震による教育施設の復旧事業に取り組んできた一年でした。体育館などの学校の施設設備に約6億3千万円。公民館や陸上競技場など社会教育・スポーツ施設に約4億2千万円。文化財関係等を合わせ教育委員会の管轄でも約20億円の復旧予算となる見込みです。倉吉市全体では現在、約91億円の復旧計画を策定しており、これに市役所の修理が上乗せになると100億円を超すことも考えられます。こうした財政の問題も克服していかねばなりません。しばらくは、がまんの生活が続くものと思います。
しかし、お金には換えがたい多くの励ましや支援を全国からいただきました。子どもたちにとって何よりの支援は学校給食でした。周辺4町の給食センター、鳥取短期大学給食管理実習棟を使用し温かい副食を提供することができました。また、被災者を元気づけるために、陸上自衛隊やさだまさしさんも支援コンサートを開催してくださいました。
「日頃公民館を利用していた中学生が『地震で大変だったでしょう。何か手伝うことがあれば言ってください。友達にも声をかけて一緒に行きます。』と声をかけてくれました。公民館で実習した鳥取看護大学の学生や地域の人たちからも申し出がありました。当日、手の付け所がないほど壊れた物、散乱している物などを目の前にして被害の凄まじさに驚きの声があがりました。作業が進み、みるみるうちに館内が整備されました。懸命に作業を続けている皆さんの姿のなかに[福祉の心]の育ちを感じ、ボランティアの真の姿を見たように思うとともに、公民館活動の成果の一端を目の当たりにしたように感じました。このような人たちが、地域を支え、地域の活性化の原動力になると強く思いました。」(成徳地区公民館 小谷次雄館長記)
この中にこそ、倉吉市が進むべき方向があると思います。私たちは、今回の地震は決して有難い事ではありませんが、改めて知ったことも数々ありました。全国の自治体からの派遣職員1,700人、ボランティア約5,000人、このように多くの人々に支えられていることを実感しました。
この地震の体験をまとめた小学生の作文 「地震が私に教えてくれたこと」 は、鳥取県小学校児童詩・作文集「あじさい」に掲載されました。「食べ物のありがたさ、冷静に考えること、日常の中にこそ幸せがあること、前向きに考えること」の教えられた4つのことを今一度考え直したいと思います。
学校でも、鳥取県中部地震をそれぞれに振り返っています。9月30日の土曜授業は、防災教育に取り組んだところも多くありました。大学の先生や鳥取県防災教育アドバイザーなどの講演、国土交通省の方や西倉吉消防署の方を招いて学習しました。地域と一緒に学んだ学校もあります。また、10月19日は、「防災メモリアル給食」でパン・牛乳・手作り梨ジャム・倉吉防災汁の献立で実施します。あの給食が実施できなかった時の思い出を忘れないでほしいと思います。10月21日(土曜日)は、学習発表会を「震災復興学習発表会」と名付け、「お世話になった地域の皆さんに元気を届けたい」という子どもたちの思いのこもった発表会にしようと取り組んでいる学校もあります。
鳥取県中部地震1年となり、復興を「福興」と読み替えた記念の催しが住民や関係団体の皆様の連携・協力で開催されます。改めて、関係者や住民一人ひとりが地域防災について考える機会でもあります。
大切なのは、ひとのつながりです。倉吉をよみがえらせるため、あなたのその力が必要です。一人ひとりができることをつなげ、倉吉を「福興」させましょう。
平成29年10月20日
倉吉市教育委員会教育長 福井伸一郎